今から60年ほど前の事です。
私の実家は山梨の田舎でした。家業は貧しい農家でした。
山間の少し開けた所に50戸ほどの家が有りますが、私の家は田んぼの中にポツンとある、そんな所でした。周囲に他の家も有りますが、一番近い家でも数百メートルは離れています。
農家ですから庭は様々な農作業が出来るほど広さがあります。その庭の片隅に鶏を放し飼いにしていた網の囲いの小屋が有りました。その小屋は畳12畳ほどの土間で、その中に卵を産める鶏たちが20羽ほど放し飼いにされ、自由に飛び回っています。昔の事ですから、今のようにケージと言われる鶏の個室のような飼育方法ではありません。まさに共同生活です。
ある日の昼間、私は一人遊びも飽きて鶏小屋の中を覗き込んでいました。
元々、卵を採るために鶏を飼っていますので全部雌鳥でした。卵は勝手に地面に産み落とす仕組みでしたので産卵された卵は早く採取しないと他の鶏が突いて食べてしまいます。
私は土間の何処かに卵が産卵されていないかジッと観察していました。
そんな風に鶏たちの行動を眺めていると、時々群れがワッと騒がしくなり何羽かの鶏が激しく飛び交うので、どうしたのうだろうと私は鶏たちの行動を観察し始めました。
観察をしていると、一羽の鶏を巡って騒ぎが起こっていました。
その騒ぎの中心の鶏は他の鶏よりも小ぶりです。しかし立派に成鶏ですが体が少し小さく、性格も何処と無く大人しそうです。他の鶏たちは積極的に餌を喋み水を飲んでいます。
その小さな鶏は餌も遠慮がちに喋んでいます。他の鶏が餌箱に居る時は遠くで見ています。
他の鶏たちは数羽で一緒に餌箱の餌を喋んでいますが、小さな鶏は誰も居なく成った隙きに餌箱の餌を喋みにやってきます。何で遠慮するのだろうと、私は不思議な思いで観察していました。
遠慮はしていてもお腹は空いて居るのでしょう、小さな鶏は我慢が出来なくなったのか、他の鶏が餌を喋んでいる最中に、そっと餌箱に近づき餌箱の餌を喋み始めました。2~3回餌を喋んだかと思ったら、一緒に餌を喋んでいる鶏が突然に小さな鶏の頭をクチバシで突きました。
小さな鶏は慌てて餌箱から逃げ去りました。
それでも、しばらくするとまた餌箱に近づき餌を突き始めました。するとまた、一緒に居る鶏が小さな鶏の頭を数回突きました。羽ばき飛び退いた小さな鶏に、今度は他の鶏が突っ突きかかり、小さな鶏は「ケッケ、コッコッ」っと悲鳴を上げて小屋の隅に逃げて行きます。
そんなことをしばらく続けて居た後、徐々に小さな鶏の周囲の他の鶏たちが集団で追い回すようになって来ました。走って逃げ回る小さな鶏に更に他の鶏たちは連鎖反応もみたいに襲いかかり始めます。まるでイジメのように観えます。
私は母親に呼ばれて鶏小屋をしばらく離れましたが、30分ぐらいして鶏小屋に戻ってみました。
そこには凄惨な光景が有りました。あの小さな鶏は頭や顔が血だらけになっています。そして先程より激しく集団で何羽もの鶏に襲われていたのです。私は鶏小屋の中に入り小さな鶏を抱いて外に連れ出し、個室の網の中に入れました。
何日かして小さな鶏の傷は治りましたが、集団の小屋に戻すと再び激しくイジメに遭いました。
仕方ないので母親に話して個室で飼うことにしました。当時は何故その小さな鶏が執拗にイジメに遭うのか不思議でなりませんでした。
あれから60年、紫微斗数の仕事をするようになって、あの小さな鶏が何故イジメに遭うのかが、人間のイジメのご相談を多く受けるようになって理解出来るようになりました。
小学生のイジメ。大人になっても社会で活躍出来なくなる人。
その原因に、ある共通点が有ると感じました。
人間も動物なのだなぁと思います。
その理由の一つが、他の鶏と違うことが有ること。それは身体が平均的に大きくなかった事、性格が弱かったこと、であると思いました。
動物の世界では、基本的に強いものが生き残るという鉄則が有るのでしょう。これは生物学的に当然の事と思います。強い個体の遺伝子を残すのが動物世界の原則なのでしょう。
動物の交尾もそうです。強い雄が雌を射止めるのはテレビでも観る光景です。たとえ弱い雄が雌と交尾しそうに成っても強い雄が現れると、雌をめぐって奪い合いの争いをして、弱い雄は立ち去る光景を観ます。しかし、人間には動物に無い高等の脳が備わっていて、弱肉強食の動物的思考は無い筈です。むしろ強い者は弱い者を助けるという事が人間に備わった素晴らしい性格と思うのですが、最近の人間は動物化し始めているのかも知れません。
何故に子供がイジメに遭うのか?
鶏の行動から観えたことから思うのに、最近の人間社会では弱い者、大人しい者、何か他と違う者に対して動物的な行動に出るようになってきたと感じます。
Blogの過去の記事にも何回も書いてきていますが、幼少期の親により心に傷を受けた子供は普通の子供のように振る舞えなくなっていて、何処か皆と違う傾向が有る。そういう子供が虐められ始める。あるいは容姿が普通でない、何か欠点が有る、そういったことに成っているのではないのでしょうか。
幼少期は心も傷付きやすく、イジメに遭えば更に薄皮の心は傷付いてしまいます。
その傷は大人になってからも様々な心の問題となり、人生を狂わせていると強く実感しました。
人は進化どころか、心は動物に成っていっているのかも知れません。
「不思議な記録」に生まれ変われば動物に成る、というお話が何度も登場しますが、そういう事が既に現実に起こっていると実感しています。
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