2017年12月20日水曜日

66年を振り返って-5

66年を振り返って-5

県立工業高校電気科を何とか卒業し、いよいよ就職となったが、クラスの90%近くは県外への就職だった。大学への進学者は40人クラスの12人であった。
私は、みんな県外への就職を希望する中で唯一県内へ就職を希望した。その理由はあまりハッキリしたものは無かった。今になってみれば、私の命盤には「たとえ末っ子でも跡取りをする」ような宿命が託されていた、そのために無意識の内に県内希望を出し、家に残る選択をしていたとも言える。

高校卒業後の最初の勤務先は甲府市内に有る、大手家電販売会社、T社の山梨支店だった。
その会社のアフターサービスを担当するサービス課の部品管理であった。

甲府市内へ勤務することと成ったが、実家の明野町からは公共交通を利用したのでは2時間以上の通勤時間が掛かり、自家用車も無かったので、甲府市内へ住むことに成った。

住居は会社で探してくれた。
見付かった住まいはアパートでは無く、「下宿」であった。多分、今時「下宿」と聴いても何のことか判らない人も多いでしょう。辞書を調べて欲しい。
辞書を調べるのが面倒の人の為に簡単に「下宿」を説明する。
「下宿」とは、普通の民家などの家の一室を間借りすることである。
つまり、玄関もトイレなども、その家の住人と共有する場合も普通だ。
当然、毎日その家の住人家族と顔も合わせるし、アパートのように友人を自分の部屋に招き入れることも自由には出来ない。当時は「下宿」というのは結構一般的であったようだ。
今では考えられない賃貸の方法だ。

防犯上、現在では問題の多い方法だ。家主が留守でも家主の家に間借り人が自由に出入り出来るし、間借り人が施錠などを怠れば家主の部屋まで窃盗に遭う可能性だって有る。

もっと悪いことを考えれば、間借り人が信用ならない人間ならば家主のプライベートエリアにも簡単に侵入出来てしまう。また、その逆も有る。実際に私が会社に行っている間に家主の家族が私の部屋を覗いたことも有ったようだ。間借り人も家族も信頼関係が成り立っていないと問題が起こる。

やはり、私の場合も問題は起こった。家主は母子家庭で母と年頃の娘の二人家族。その二階に私が一部屋を借りた。会社が見付けて借りた部屋だが、私は当初困惑した。まったくのプライバシーが無いからだ。部屋に鍵が有る訳でもなく、玄関も一緒なので私の生活は丸見えだった。当然、1階の母子の生活も丸見えだ。
ただ、便利なこともある(?)。私が会社に行く時に二階の窓の外の、物干し竿に洗濯物一式を干して出かけて、夏の午後など夕立が有る時には、家主のお母さんか娘さんか、どちらかが私の部屋に立ち入り窓の外の洗濯物を取り込んでいてくれてるのだ。

私は会社に居て、夕立が有ると部屋の外の洗濯物のことが気になったが、夕方部屋に戻ってみれば、干して有った洗濯物が全てキチンと折り畳んで、私の部屋の片隅に置いてあった。下着までも。

私は、この洗濯物をお母さん、娘さん、いったいどっちが取り込んでくれたんだろうって恥ずかしくなったり、アットホームな感じで嬉しかったりの複雑な心境であった。うっかり女性ヌード写真雑誌など置いては置けない状況である。

当時でも集合式のアパートは有ったのに、会社は何故に下宿を選んだのか不思議だ。費用の関係なのか。
やがて、問題が起こった。といっても大したことではなかったが。

それは入居後半年したくらいの夏の日のことだった。
有る朝の土曜日、会社に出かける支度をしていたら、二階の私の部屋に一階に住んでいる家主のお母さんが登ってきて、私の部屋に来た。

お母さんは「今日、私は旅行で出かけてしまいます。帰って来るのは明日の夜ですので、娘が一人で留守番してますので、よろしくお願いします」と言った。

私は、「お母さんが留守中は娘が一人なので、防犯に協力して欲しい」と解釈した。
私は「はい、出かける時はシッカリ施錠します。何か有ったら娘さんに協力します」

お母さんは「よろしくお願いしますね」と言って階段を降りていった。

そして会社が終わり、私は下宿に帰ってきた。家は誰も居なく留守だった。
私は留守を任された気分でちょっと責任感を感じていた。

下宿の部屋で夕食を済ませ、部屋に寝っ転がってテレビを観ていた。
一階の玄関の開く音が「ガラガラ」と聞こえて来たので、私は急いで一階に降りる階段の所まで行ってみた。そこからは玄関が広く見下ろし眺められた。玄関の鍵を開けて入って居たのは娘さんと若い男性だった。二人の雰囲気からして恋人という感じだった。

私が二階から玄関を見下ろしているのに、娘さんは最初気付かなかったが、娘さんが見上げたら、私とパチンと目が合った。一瞬、娘さんは驚きの表情と「何よ!」という顔をした。
私はマズイものを観てしまったと思った。私は「お帰りなさい」と言って会釈をしながら部屋に戻った。そしてテレビを観て過ごしていた。

一階の二人は何をして過ごしたのかは気にも成らなかったが、深夜に玄関の戸が「ガラガラ」っと音がして開くのを感じた。布団の中で時計を観ると、午前2時半を過ぎていた。

気になった私は、そっと一階に降りる階段の所まで行って玄関を見下ろして観たら、彼を見送る娘さんの姿が玄関に有った。私の気配を感じたのか娘さんは直ぐに二階を見上げた。またしても娘さんと視線が衝突した。気まずくなった私は黙って部屋に戻り布団に入った。



それから1週間後、会社の総務部長から「宮崎くん、今住んでいる下宿を他へ代わって欲しいと大家さんから連絡が有ってね。会社で探したら別の住まいが有るんだけど、一緒に見に行って良かったら引っ越しして欲しいんだけど。引越し費用は会社が負担するので」、そう言われ新しい住まいを見に行った。

新しい住まいは2階建てで、一階と二階は別々の住居に成っていて、一家にはすでに若い夫婦が住んで居るようだった。私はその二階を観て引っ越しを決めた。

その新しい住居の周辺は、いわゆる歓楽街であった。バーやスナック、ピンクサロンも軒を連ねていた。18歳の青年が住むのには少し刺激の強い場所であった。

実際、引っ越して最初の夜から、薄暗く成りだして、軒を連ねるピンクサロンの店先には、超ミニのお姉さん達が細く長い脚を見せびらかしていた。


<続く>


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